ネコの腎不全に関連する物質「AIM」発見のニュースについての私見

猫の腎不全に興味を持っている飼い主さんが多いようなので、昨年のニュースになりますが、「猫の腎不全の治療法の開発に期待 - 東大が原因を解明」のニュースについて、私なりの解説と個人的な意見を書かせていただきます。私の不勉強による間違いのご指摘があれば、ぜひよろしくお願いいたします。
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腎不全の原因が完全に解明されたわけではない

このニュースのタイトルだけ見ると、猫の腎不全の原因がすべて解明されたと受け取ってしまう方もいると思いますが、あくまで、「猫が腎不全になりやすい原因となり得る物質の1つ」の発見です。今後期待できる研究だと思いますが、現時点で治療につながるのかは不明です。

東大のAIMに関する研究内容

まず、「日本医療研究開発機構」のホームページのお知らせから、「ネコに腎不全が多発する原因を究明―ネコではAIMが急性腎不全治癒に機能していない―」のページのを参考にさせてもらいます。

この研究は東京大学の宮崎教授によって発表されたものであり、この研究のポイントとして、

・血液中のタンパク質AIM(apoptosis inhibitor of macrophage;CD5Lとも呼ばれる)は急性腎不全を治癒させる機能を持つ(注1:過去の主な文献1~6)が、ネコAIMは急性腎不全時に機能せず、そのためにネコでは正常な治癒・回復が障害されていることを見出した。

・ネコ型AIMに起因する急性腎不全の治癒障害は、AIMタンパク質の投与によって治療できた。

・本研究は、これまで謎であった、ネコで高頻度に腎不全が生じる原因を解明し、ネコの腎不全の革新的治療法の開発につながるとともに、ヒトにおいても、AIMによる急性腎不全の治療や慢性化の予防への期待と現実性をさらに高めるものであると考えられる。


と書かれています。非常に画期的な研究であり、さらに研究が進むことを期待したいです。
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ネコにAIMを使った実験ではない

この研究では

・ネコ型AIMが体内で働きが弱いことは分かったが、実際にネコ型AIMが猫の慢性腎不全の原因となっているという証明はできていない(マウスの体内においては、ネコ型AIMを持っていると急性腎不全からの回復が弱くなることは証明されている)。

・この研究では、実際の猫の急性腎不全あるいは慢性腎不全に対するAIMの効果を見ているわけではない

という点がまだクリアされていません。

研究からわかること

この研究でわかったことを私なりにまとめると以下のようになります。

① AIMは急性腎不全で尿細管(腎臓の中の細い管)にたまってしまう「ゴミ」を掃除して、急性腎不全からの回復を助ける
② ネコのAIMは急性腎不全時に機能しずらい
③ マウスのAIMをネコのAIMに変えると、急性腎不全からの回復が極端に落ちる
④ そのマウスにAIMを投与すると急性腎不全からの回復率が良くなる


実用化に向けて

今後、以下のような点がわかってくると実用化されるようになるのではないかと思います。

① ネコへのAIMの投与が本当に猫の急性腎不全を回復させるのか?
② ネコの慢性腎不全の発生にどれほど急性腎不全およびAIMが関係しているのか?
③ 具体的にどのタイミングでAIMを投与すると効果があるのか? (ほとんどの猫で慢性腎不全が起こるきっかけはわかりません)

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AIMは非常に新しい研究分野

AIMはヒトの方でも研究が始まったばかりの分野であるようで、今後新しい発見がどんどん出てくる可能性はあると思います。ただし、発表されたデータを見る限り、猫の慢性腎不全とAIMがどこまで関係しているのかのデータが出ていないので、「腎不全の原因物質」とまでは言えず、現在のところ「急性腎不全の回復に関係する物質」であるとともに「猫の腎不全の発生や悪化に関わる可能性のある物質」と言った方がいいのではないかと思います。

ネコの腎不全の解明の糸口

私は研究者ではないですし、あくまで臨床獣医師の個人的な意見ですので、もし間違いがあればご指摘いただけると幸いです。この研究では、猫の腎不全の原因の究明や新しい治療方法の発見の糸口という意味では非常に重要であり、もちろんこの研究を否定しているわけではありません。ただし、これで腎不全が解決するとまでは期待するのはまだ早いのではないかと感じます。
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