腎不全猫に朗報!猫の新しい腎不全治療薬「ラプロス」の製造販売承認下りる!

今日は、かなり興味深いニュースが入ってきたので、その解説をしていこうと思います。猫の新しい慢性腎不全治療薬の製造販売承認が下りたというニュースです。新薬はベラプロストナトリウムと言われる成分の「ラプロス」という薬ですが、今年か来年には販売になる可能性が高いと思われます。
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高齢ネコに圧倒的に多い病気「慢性腎不全」

猫の大敵である慢性腎不全は、ヒトと同様高齢化が起きている猫の社会では、圧倒的に多い病気です。治療をしていない猫も含めると高齢ネコの3~4割は慢性腎不全にかかっていると言われています。今回はその新しい治療薬について、少しわかりやすく臨床獣医師としての立場から解説させていただこうと思います。

腎不全について詳しく知りたい方は「犬と猫の腎臓の働きとBUN、Cre、尿比重の意味」の記事も参考にしてください。
新薬「ラプロス」の効果

薬の成分は「ベラプロストナトリウム」、プロスタサイクリンと言われる物質の一種になります。

ベラプロストナトリウムは「血管内皮細胞保護作用、血管拡張作用、炎症性サイトカイン産生抑制作用および抗血小板作用を有しており、これらの薬理作用によって腎臓の虚血および低酸素状態を改善させ、腎機能の低下を抑制し臨床症状を改善させることを可能とするもの(※)」ですが、これではよくわからないと思いますので、少しご説明いたしましょう。
マイナビニュース 
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猫の慢性腎不全はいくつもの要因が絡み合って進行する

まず、猫の腎不全の発症・進行にはさまざまな要因がかかわってきます。多くは、免疫学的な問題により、腎臓に眼に見えないような炎症が起こり、炎症産物である免疫複合体などが腎臓の血管に付着し、腎臓の構造や細胞が変性したり、破壊されてしまいます。腎臓の変性や破壊が起こると腎臓内の血圧が上がって、腎臓の血管内皮細胞などに負担がかかりさらに変性や破壊が進んで、腎臓の機能が落ちてしまいます。そうなると、正常に働いている腎臓に負担がかかり、同じように変性や破壊が進んできてしまいます。また、血管の変性や破壊、免疫複合体の付着などは、その部位の血流の低下(虚血)と酸素不足(低酸素)をもたらして、余計に腎臓の破壊を進行させてしまいます。

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「高血圧」「炎症」「編成と破壊」による悪循環

腎不全の原因はいろいろありますが、腎臓の中で起こる
・高血圧
・炎症
・腎臓の細胞や構造の変性・破壊

の3つがそれぞれ絡み合い、悪循環を起こすことで慢性腎不全が進行していくと考えられています。

ベラプロストナトリウムが悪循環をシャットアウト

ベラプロストナトリウムは
血管内皮細胞保護作用=腎臓の細胞や構造の変性・破壊を防ぐ
血管拡張作用=高血圧を防ぐ
炎症性サイトカイン産生抑制作用および抗血小板作用=炎症を防ぐ

という3つのメカニズムで腎臓を保護する薬です。
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猫の慢性腎不全に対するベラプロストナトリウムの効果に関する研究

猫の腎不全に対するベラプロストナトリウムの効果に関する研究もご紹介しておきますね。
猫の慢性腎不全に対するベラプロストナトリウムの効果についての検討
この研究では、腎不全の猫11頭に対して、ベラプラストナトリウム投与し、その効果を見ています。対象が少ないため、確定的なことは言えませんが、Stage1~2(初期~中期)の腎不全の猫には、腎機能の改善効果が認められる一方、Stage3のようなかなり進行した腎不全の猫への効果はいまいちであるという傾向がみられます。猫の腎不全のステージ分類に関してはこちらをご覧ください。血液検査があれば愛猫ちゃんのステージはすぐにわかりますよ。

ちなみにラプロスは
「効能又は効果:猫:IRISステージ2~3の慢性腎臓病における腎機能低下の抑制及び臨床症状の改善」となっています。おそらくその後の研究でステージ3の腎不全にも有用性が確認されたものと思われます。

海外の文献を検索してみましたが、ベラプロストナトリウムの腎不全の猫に関する情報は見つからず、海外でもまだ行われていない治療のようですね。おそらく人体用として日本で開発された薬であるため、海外ではまだ使われていないのではないでしょうか。

副作用は未知数だが、少し心配

一方で、ベラプロストナトリウムは消化器障害による食欲不振やおう吐、出血傾向などの副作用のリスクもあるようです。特に、腎不全で食欲の落ちている猫に消化器障害が出てしまうと脱水から余計に腎不全が進行してしまう可能性もあります。どれくらいの割合で出てしまうのかは不明ですが、今後、データが集まってくるともう少し副作用に関してはわかってくると思います。

期待できる腎不全治療薬

ラプロスの製造販売承認が下りたということは、おそらく近々、販売開始前のプロモーションが各動物病院やセミナーを通して行われ、販売されるという流れになると思います。ラプロスの効果や適応となる腎不全のタイプ、副作用が出にくい投与方法・投与量なども今後発表があるものと思われます。

またわかり次第報告させていただきますね。今までの腎不全治療薬にない画期的な効能を持っていますので、猫の腎不全の治療や予後が劇的変わる可能性もあり、期待できる薬ですが、やはり販売されて使い始めるまでは過度な期待はやめておいた方がいいでしょう。
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今後の続報にご期待ください。

続報出ました「4月販売開始予定の東レ新薬。猫腎不全治療薬「ラプラス」のデータをわかりやすく解説

猫の腎不全について詳しく知りたい方は「犬と猫の腎臓の働きとBUN、Cre、尿比重の意味」の記事も参考にしてください。


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