猫の慢性腎不全治療薬ラプロスの肥大型心筋症への応用の可能性

猫の慢性腎不全治療のための新しい薬「ラプロス」が販売されますが、このお薬は、慢性腎不全だけでなく、猫の肥大型心筋症にも使える可能性もあります。あくまでこれは私の個人的な意見であり、ラプロスの適応は「猫のCKD(慢性腎臓病)ステージ2~3」ですので、勘違いのないようにお願いします。

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肥大型心筋症とは

慢性腎不全の原因は、犬では僧房弁閉鎖不全症(左心房と左心室を分ける弁の異常)が多いのですが、猫では心臓の筋肉が分厚くなる肥大型心筋症が多いです。

肥大型心筋症では、心筋が変性し左心室の心筋が肥大することが多く、左心室の容量が少なくなってしまいます。そうなると全身へ血液を送り出す能力(心拍出量)が減少するとともに、左心室へ血液が流れる左心房に血液が溜まります。心拍出量の低下に伴い、体は血管を収縮させるため、血圧が上昇し、左心房に溜まった血液には血栓ができやすくなります。右心室の心筋が分厚くなることもあり、その場合は左と同じことが右にも起こります。

肥大型心筋症で起こる体の中の変化

猫の肥大型心筋症では、体の中では以下のことが起こります。

・心筋の肥大
・心拍出量の低下
・左心房(右心房)のうっ血
・血栓のリスクの増加

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ラプロス(ベラプロストナトリウム)を肥大型心筋症に使用した例

こちらの研究で、肥大型心筋症の猫にベラプロストナトリウムを使用した結果が報告されています。この研究では、肥大型心筋症の猫に対して、ベラプロストナトリウムの投与が効果のある可能性が示唆されています。

1頭は4歳の血栓塞栓症を発症した例、もう1頭は19歳の無症候性の肥大型心筋症です。どちらもエコー検査やレントゲン検査で肥大型心筋症と診断され、ベラプロストナトリウムによる治療がなされています。

結果は、どちらの猫も心筋壁の肥厚の改善や心房拡大の低下など、長期間にわたって心臓の検査数値の改善を認めています。


なぜラプロスが肥大型心筋症へ効くのか

ベラプロストナトリウムが肥大型心筋症に効果のある理由として考えられることは
・血管拡張作用=高血圧やうっ血の改善、心拍出量の増加
・抗炎症、抗線維化作用=心筋肥大の抑制
・血小板凝集抑制作用(抗血栓作用)=血栓発生の予防

などがあげられます。特に、血栓の発生の予防に関しては今までの心不全の薬には存在せず(リスクが高い子には別に抗血栓のお薬を飲ませる必要がありました)、ラプロスの大きなメリットではないかと考えられます。

肥大型心筋症へのラプロスの投与はまだ研究段階だが、可能性のある治療法

この研究では、心不全動物へはベラプロストナトリウムを減量する必要性のある可能性(血管拡張作用により血圧が低くなり腎不全の発生のリスクがある)が示唆されています。また、2頭のみの治療報告ですので、結論を言うのには研究対象が少なすぎるということもあります。ただし、ラプロスが効くメカニズムからは、肥大型心筋症に使える可能性は非常に高いのではないかと思います。今後、肥大型心筋症へのラプロスの適応に関するデータが出てくることを期待します。ラプロスは慢性腎不全だけでなく、なかなかいい治療法のない肥大型心筋症の希望の光にもなるかもしれません。
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参考 ベラプロストナトリム投与により循環動態に改善が認められた猫肥大型心筋症の2症例
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