猫の慢性腎不全治療「ラプロス」を、GFRの観点から今までの腎不全治療薬と比較してみる

猫の慢性腎不全治療薬の新薬「ラプロス」の販売に向けて、現在使われている猫の慢性腎不全治療薬との違いを自分の頭の中で整理する意味で、もう少しラプラスについて考えていこうと思います。今回はGFRについてです。
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GFRとは

GFRとはGlomerular Filtration Rateの略で日本語では「糸球体ろ過量」と訳されます。腎臓で尿が作られる過程は、糸球体でのろ過尿細管での再吸収・分泌という2段階がありますが、そのうち糸球体の機能を見るのがGFRです。糸球体と尿細管で起こることの詳しいお話は犬と猫の腎臓の働きとBUN、Cre、尿比重の意味を参考にしてみてください。

GFRは血液をろ過できる量の目安になるため、腎臓から老廃物を排泄する能力の指標として非常に重要です。糸球体ろ過量は糸球体を通る血液量によって変わってきますので、正常に働く糸球体の数と血流が大切になります。


慢性腎不全で糸球体高血圧が起こるわけ

慢性腎不全では糸球体の変性と消失が起き、正常な糸球体の数が減ってしまいます。それを補うために、正常に働く糸球体の血圧を上げてろ過量を保とうとしますが、これが糸球体高血圧です。これは、老廃物の排泄という面ではとてもいい代償反応なのですが、糸球体高血圧は正常に働く糸球体への負担が加速度的に大きくなり、腎不全を進めてしまう原因になるという負の側面を持っています。


猫の慢性腎不全治療薬には糸球体高血圧の改善作用がある

今現在、猫の慢性腎不全によく使う薬として、「ACE阻害薬」「アンギオテンシン受容体阻害薬(ARB)」という2種類の薬があります。ACE阻害薬にはエースワーカーフォルテコールなどが、ARBにはセミントラがあります。これらの薬は似たような作用を持っており糸球体から出ていく「輸出細動脈」を拡張させ、血液が溜まってパンパンになった糸球体から血液が出ていく出口を広げてあげることで、糸球体高血圧を改善します。糸球体高血圧が改善されると、タンパク尿が減るため、タンパク尿の改善のためによく使われる薬でもあります。
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糸球体高血圧を改善するとGFRが下がるというマイナス面も

ACE阻害薬とARBは腎臓の保護には非常に有効な薬なのですが、糸球体高血圧を改善する代わりにGFRが低下してしまうというマイナス面があります。少なくなった糸球体でうまく血液をろ過するために、圧をあげているため、その圧が下がることでGFRも下がってしまいます。ACE阻害薬やARBの投薬によって、ヒトではGFRの低下が報告されています。猫ではGFRを改善するという報告もありますが、時にGFRを低下させて腎臓の数値が跳ね上がってしまう原因になることがあります。特に脱水していて血圧が下がっている場合には要注意です。


ラプロスにはGFRの低下がない??

一方、ベラプロストナトリウムの投与では、人においてGFRは低下しないようです(腎疾患と
プロスタサイクリン
)。こちらの記事には、ベラプロストナトリウムの作用がかなり詳しく書いてあるので、もう少し勉強したい方はご覧ください。

猫でもベラプラストナトリウムの研究において、GFRが維持される可能性が高いという報告もあります(慢性腎不全の治療薬)。ACE阻害薬とARBとは異なるメカニズムで血管を拡張するため、ラプラスにはGRFの低下の副作用がないのかもしれません(まだはっきりはしていませんし、GFRが低下する可能性も否定できません)
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ラプラスの可能性に期待

ラプラスは、まだ新しい薬で猫にはほとんど使われていませんので、今後さまざまな報告が上がってくるでしょうし、GFRの低下を含めた副作用が認められる可能性もあります。ただし、もしGFRが維持されるのであれば非常に使いやすい薬になります。また、ラプロスには血小板凝集抑制という作用もあり、これは血栓塞栓症のリスクが非常に高い心不全と併発した慢性腎不全の猫には貴重な薬になる可能性もあります。次回はラプロスの心不全への応用の可能性に関しても私の考えを書かせてもらおうと思います。
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